所属教員と研究内容

所属教員と研究内容

知能数理グループに所属する3人の教員について紹介します。

齋藤夏雄

 専門は代数幾何学です.代数幾何学は,多変数の連立多項式系の解集合として定義される代数多様体を研究する分野です. 直線や楕円,双曲線など,多項式で定義される曲線はみな代数多様体の一種です.特に正標数の代数的閉体上で定義される代数多様体の分類について興味があり,研究を続けています.

卒業研究の内容

  • 有限群論の応用
  •  有限群論は代数学の基礎をなす一分野です.群論を用いることで,日常見かけるいろいろな事物が実は奥深い数学的構造を持っていることを知ることができます.特に,n個の数字の入れ替えである置換によって作られる置換群は,ルービックキューブやスライディングブロックパズルなど,パズルについて調べるときにきわめて有用です.群論の基礎を一通り学んだうえで,こうした対象について考察します.

  • 符号理論
  •  離れた場所に情報を伝達するとき,その情報をいかに効率よく,またエラーを少なく送るかは重要なテーマですが,これを研究するのが符号理論です.1981年にGoppaによって定義された代数幾何符号により,代数幾何学と符号理論は密接な関係を持つことが明らかになりました. また最近では,数論における重要な研究対象であるゼータ関数と符号との関係も指摘されています.こうした符号理論の数学的背景に注目し,どうすれば「よい」符号が得られるかという観点から研究します.

  • 組合せゲーム理論
  •  将棋や囲碁のように,あるゲームボード上で2人のプレイヤーが交互にルール上許された「手」をプレイして勝敗を決めるゲームを調べるための理論として,組合せゲーム理論があります.組合せゲーム理論は近年急速に発展しつつある新しい分野ですが,その一部は代数学と関連があります.組合せゲーム理論の基礎をざっと学んだうえで,さまざまなゲームについて勝敗の可能性やゲームの進行について調べます.

  • 暗号理論
  •  インターネットが社会に深く浸透した現在,安全な暗号理論の需要はかつてないほどに高まってきていますが, 1次元代数多様体である楕円曲線や超楕円曲線を用いた暗号の有用性が近年になって指摘され,その研究が活発に行われています. こうした楕円曲線暗号ないし超楕円曲線暗号について,その安全性と攻撃手法について考察します.

  • 折紙の数理
  •  専門分野からはやや外れますが,折紙の持つ数学的側面についても個人的に興味を持っています. 折線と折紙の関係や数学的対象物の折紙による実現可能性など,折紙を巡る様々な数学的話題について考察します.

関根光弘

卒業研究の内容

  1. 数理生物学
  2.  生物の個体群サイズの推移や空間分布の状況を表す決定論的数理モデル (微分方程式系あるいは差分方程式系)を数学の理論とコンピュータによるシミュレーションを用いて解析します. たとえば,
    • 漁獲量が少なくなると小魚が減って,サメやエイが増えるのはなぜか?
    • 外来生物種の国内への侵入は可能か?国内種との共存は可能か?
    といった問題を比較的単純なモデルを用いて基礎理論の立場から考察します.微分方程式の初歩を知っていると研究に入りやすいですが, モデルに対する興味があれば同時に学んでいけると思います.
  3. 結び目理論
  4.  三次元空間内にある結び目(閉じた空間曲線)を区別するさまざまな量について学びます. ひもを切ったりせずに連続的に変形したときに不変なままである量が無数に多くあることを理解し, そのうちのいくつかの計算手順をコンピュータに実装して強度を比較します.こういう「数学」もあるのかと驚かれるかもしれません. 予備知識は少なくても大丈夫ですが,その分意欲的に頭を使い,手を動かして下さい. このことは他の研究テーマでも同じです.
  5. その他いくつかの例
    • 四次元空間内の図形を三次元空間に射影したものから理解すること
    • 三次元空間内に置かれたグラフの位相的構造について調べること
    • 文様の幾何学
    諸君の興味と力量に応じて幾何学関連のテーマを用意します.

 過去の先輩達の卒業研究は主として1あるいは2と関連しているものが多いです. 大学院に進学して研究することを希望する場合はなるべく1を選んで下さい. (他と比較して1が難しいテーマというわけでは決してありません.)

佐藤倫治

専門は数理統計学です. 主に相関のあるデータの統計解析手法について研究しています. 統計学という学問の中に, 確率論をベースとしてモデルや分析法に対する数理的側面を研究する数理統計学があります. 中でも相関のあるデータは, 医学, 経済学, 教育学, スポーツ学など様々な分野で収集され, 関心の高い領域となっています.

卒業研究の内容

線形回帰モデルやロジスティック回帰モデルのような基本的な統計モデルについて学び, モデルに適した推測法の修得を目指します. その上で, 各自が興味を持った分析手法について深く学び, 興味のあるデータを分析することで理論と応用を両側面から理解することを目的とします.

  • 回帰分析
    興味のある変量とそれに関連すると思われる変量の関係を分析します. 仮定するモデルと推定方法について学び, 実データを用いて分析を行い, 正しく解釈する力を身に着けます.
    • マツダスタジアムの観客数に関する統計解析・・・対戦相手や天気, 休日か否かなどが観客数の変動と関連があるのかを回帰分析により調べた.
    •  東京都の市区の犯罪件数に関する回帰分析・・・昼間人口や完全失業者率, 警察署数, 飲食店数などが各市区における犯罪件数と関連があるのかを調べた.
  • 臨床試験デザインと推測法
    医学研究における臨床試験では, 疾患領域や治療法により適切な試験デザインが異なります. それに加えて, 臨床試験デザインごとに適した統計手法が異なります. 様々な状況に適した統計分析を実施するためには, 数理統計学が重要となり, 医学分野における貢献が期待できる研究も多いです.

その他にも様々な分野と関連が多いのが数理統計学です. データ分析においては統計解析に特化したRを使用します.
上に挙げた研究内容以外にも数理統計に関連する内容であれば幅広く指導します.